- 目先は住宅ローンの金利は上がらない。むしろ引き下げる銀行も出てきている。
- 将来的には日銀による追加の金利引き上げにより、住宅ローンの金利も上昇する
- これから新規で住宅ローンを組む場合、2%程度までローン金利が上昇する前提で組むべし

マイナス金利が解除になって、住宅ローンの金利がどうなるのか、銀行に問い合わせが殺到しているんだって。



無理もないね。住宅ローンを組んだ人は一度に何千万円もの債務を抱えているわけだから、当然気になるだろうね。



実際に、住宅ローンの金利は上がるの?



結論から言うと、すぐには上がらないと思う。むしろ金利を下げる銀行も出てきているよ。でも、近い将来に金利が上がる可能性は高いね。



え、どうして?



今回、日銀は政策金利をマイナスからプラスに引き上げたんだけど、今後も追加的に金利を引き上げていくと思われる。そうなると、住宅ローンの金利も上がるだろう。



でも、「住宅ローンの金利はすぐに上がらない」って、日銀や銀行のエラい人も言っていたけど…



うん、確かに言っていた。ただそう言っておかないと、みんなとても不安になって経済が混乱してしまうかもしれないから、とりあえず安心させる必要があったのは間違いない。でも、あまり鵜呑みにしない方がいい。



じゃあどうしたらいいの?



慌てる必要はないよ。でも、これから新たに住宅ローンを組む人は少し注意が必要だ。
【バンカー視点】マイナス金利終了による住宅ローンへの影響は?
目先の金利に大きな変化は無い
日銀のマイナス金利解除のニュースから、2週間弱が経った。住宅ローンについて、各銀行の動きはどうか。
まず、メガバンク等大手銀行をはじめ、多くの銀行はローン金利を「据え置き」としている。
三井住友信託銀行や一部のネット銀行は、むしろ金利を引き下げる措置を取った。
一方で、楽天銀行は金利を引き上げるようだ。
銀行によって基準金利や戦略は様々だが、目先は大きな変化は無いというのが実情だ。しかし、将来的にも変化はないのだろうか?
全国銀行協会の新会長「いずれはローン金利が動く」
この4月1日付で、三井住友銀行の頭取が、全国銀行協会の会長に就任した。
そのインタビューの中で、住宅ローンに関する発言があり、内容は以下のとおりだ。
現時点での住宅ローンへの影響は「相当限定的」と分析した。ただ「次の利上げ、その次の利上げが見えてくると多少は(金利が)動くと思う」とし、金利がさらに上昇すれば「返済計画をしっかりと相談していかなければならない」とも語った。
日本経済新聞より引用
あくまでも現時点では影響が無いものの、将来的なローン金利引き上げは、現実的なものとして考えるべきだ。
日本人は金利上昇への耐性がない!?
住宅ローンの金利は、「固定金利」と「変動金利」の二種類がある。統計によると、日本では7割が変動金利を選択している。
固定金利はその名の通り、ローンを組む時点で決定した金利がローン期間中変わらないため、毎月の返済額も一定である。
これに対して変動金利は、おおよそ半年ごとに金利が見直される、経済情勢に応じて返済額が増減する。
よって、将来金利が上昇した場合には、返済額が増加することになるわけだが、「これから金利はもう上がらないよ」と言う方は周りに多くいた。(金融業界でもよく聞いた)
日本では低金利時代が長く続いているため、金利がいざ上がるという感覚、現実味がないのだと思う。
ちなみにアメリカでは9割の人が固定金利型を選んでいる。金利が上がったり下がったりする世界がいわば当たり前であり、金利変動のリスクを抑えているということだ。
住宅ローン金利の引き上げに、どう備えるべき?
そもそもどのくらい返済額は増える?
実際にローン金利が上昇すると、返済額はどの程度増えるのだろうか。
4,000万円の住宅ローンを35年間で借り入れ、変動金利が0.5%から1.5%に、つまり1%上昇した場合、月々の返済額は約13,000円増加する計算になる。0.5%から2.5%に、すなわち2%上昇した場合、約28,000円増加する。
大した金額ではないと思うかもしれないが、残債期間が長いほどボディーブローのように効いてくることになる。
「5年・125%ルール」はあまり関係ない
変動金利型には「5年ルール」や「125%ルール」という制度が適用されているケースが多い。
「5%ルール」は、金利が上昇した場合でも5年間は返済額が固定されるという制度だ。これにより、ローンの借り手は短期間での急激な返済額の増加を避けることができる。
「125%ルール」は、金利変動後の返済額が、金利変動前の返済額の125%を超えないように制限する制度だ。いずれの制度も、借り手の返済負担の過度な増加を防ぐために設けられている緩和措置だ。
ただこれらはあくまでも毎月の返済額の増加を緩和するだけであり、実際の返済額が減るわけではない。
毎月の返済額の内訳をみると、利息部分が大きくなっていて、元本が思ったより減っていない、なんてこともあるので注意だ。決して魔法のような制度ではない。
固定金利へ借り換えをするべき?
まず、ローン借り換えをする場合のコストをざっくりと把握しよう。
残債額や選択中のプランにもよるが、多くの銀行がローン残高の2%+消費税程度の事務手数料を取っている。
例えば、ローン残高が3,000万円の場合、約60万円の手数料が発生する計算だ。残債期間が長いほどメリットが大きいので、きちんと返済額や手数料を比較して計算しよう。
では、固定金利型への借り換えはすべきだろうか。結論からいうと、残債期間が20年以上あって、ローン金利が2%になったら返済に不安が出てくる場合、固定金利型を選択すべきかと思う。
2024年3月現在、全期間(35年)固定型の金利はおおよそ1.3〜2.3%程度となっている。
もし、日本の短期金利が2%まで上がった場合、変動型の住宅ローン金利は2%半ば程度まで上がることになるので、早めに固定金利型に切り替えるのも一つだ。
ちなみに、欧州の住宅ローンは4%、米国の住宅ローンは6%程度となっている。日本の住宅ローン金利はそこまで上がらないと思うが、日本も2%程度まではローン金利が上がる可能性を考慮しておくべきだ。
2%まで金利が上がっても、返済に余裕があるのならば、何もしなくてよいだろう。繰り上げ返済も一つかもしれないが、キャッシュが大きく減少するのは得策ではない。
日本の金利はまだ上がるのか?
早くも次の金利利き上げ観測も
日銀の植田総裁は、マイナス金利解除(金利引き上げ)の際、「当面は緩和的な金融環境が続く」としたが、マーケットでは早くも”次”を見据えた声が出始めている。
まず、日銀が追加で金利の利上げ(以下「追加利上げ」)をする場合、日銀による金融政策決定会合にて発表される可能性が高いわけだが、今年は7月・10月の会合で「経済・物価情勢の展望」が公表されるため、あるとすればそのタイミングで追加利上げが発表されると見られている。
さらに、足元は1ドル=151円程度で推移しているが、早くも政府による”為替介入”発言が出てくるなど、想定以上に円安が続いている状況が続いている。
日本は、様々なモノ・サービスを海外からの輸入に頼っているため、円安がさらに進むと物価上昇が止まらなくなる。日銀はそれを食い止めるために、追加利上げをする(せざるを得ない)ことになるわけだ。
マーケットは1%超の金利引き上げを織り込み始めた
前述の金融政策決定会合にて、年内に1〜2回の追加利上げを予想する声が多く、当初は0.25%〜0.5%程度までの利上げが予想されていた。(ちなみに今の政策金利は0%〜0.1%)
なお、日本の政策金利が0.25%を超えてくる場合、住宅ローンの金利も上がってくると言われている。
ただし、ここにきて、特に海外の投資家を中心に、1%〜それ以上の追加利上げを予想する声が出始めている。主な理由は、前述した「円安」の定着だ。
前述した全国銀行協会会長の発言にもあるように、住宅ローン金利は今後上がると思っていた方がよい。
さいごに
これから住宅ローンを組むなら、返済に無理の金額で!
これまで述べてきたように、私は住宅ローン金利はこれから間違いなく上がると思う。
マイナス金利が解除された際、「当面は緩和的」「すぐに住宅ローンに影響はない」という言葉が並んだが、住宅ローンはそもそも最長35年(そういえば50年ローンも出てきたか…)の長期間で借りるケースが多いため、当然長い目で考えなければならない。
よって、新規で住宅ローンを組む場合、返済金利が2%(保守的にみて3%でもいい)まで上がっても、余裕があるで金額で考えることを勧めたい。
引き続き、住宅ローンの動きをウォッチし続け、定期的に動向をブログにてお伝えしたい。
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